二人で帰るいつもの帰り道、6年間通った小学校と、3年間過ごした中学校と、
これから過ごす高校のほぼ中間地点に存在する、小さな小さな雑貨屋さん。
小学校のとき、母親と店員の女の人が笑いながら話すのを見ていた。
中学校のとき、幼馴染の彼女がふと気にしていたのを知っていた。
高校になって、若干緩やかになった登下校の原則を背に、勇気を出して中に入った。
レジの上に母親らしき黒猫と、足元をちょこちょこと歩く小さな黒と白の子猫が二匹。
俺を見て、にゃーと鳴いた。
「いらっしゃいませ」
まるでそう言ってるみたいだった。
母親猫は閉じていた目を開けて、ゆったりとにゃー、若干低い声で一声鳴いてまた眼を閉じた。
小さな小さな店内。
置かれた物は身に付けるものが多い。
猫の形をしたアップリケと小さな巾着。
銀色に光る鎖のネックレス。
花を咲かせた小さな模造のサボテンの植木鉢。
赤と青の色に染められた鳥の羽のついた帽子。
「いらっしゃいませ」
後ろから声を掛けられて振り向けば、記憶に薄っすらと存在する女店員。
あら、と聴こえた声は昔と変わらない。
久しぶりに見た顔が来たわねぇ、なんてのったりと笑った。
「ごゆっくり。」
そう言って店員・・・いや店主はレジのところに座って本を読み始めた。
俺は息を吐いてもう一度店内を見回る。
あ、声が出掛けて止まった視線。
そして見つけた、『宝箱』
これと言った装飾もなく、寧ろ店内じゃ目立たない場所に置かれた小さな小さな物。
それでもこれが気になった。
「やっぱ似てんのねぇ、君達。」
「は?」
女店主はレジの陰から顔だけを向けて笑った。
「あの子も、それみて10分くらい動かなかったもの。」
それ、と指し示した『物』
夕日の赤が反射する銀色の四角い箱。
すぅっと走る切り取られた線はつなぎ目。
蓋の上に描かれた雪の結晶の模様。
たったそれだけ。装飾はそれだけ。
けれど、蓋を開けて、流れる数音。
きりきりきりと一つ一つ紡ぐ音のメロディ。
「包む?」
そのオルゴールを手にとって、お願いします。
そう頼むのに時間は掛からなかった。
きっと渡したら、愕いた顔をするんだろうな、
幼馴染だった彼女の顔を思って、一つ笑った。
母親猫と子猫二匹は、
ニャー
やっぱり合唱するように「ありがとうございました」
そう言って鳴いた。
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