『 紅條 遡羅 』ヒロイン
『 伊崎 結衣 』主人公
『 坂下 優希 』同中男子
逃げて逃げて逃げて
でも結局逃げられない。
敵わないと知っていても
それでも逃げるだなんて出来なくて
馬鹿な自分
晴天下のセブンティーン
優希のあんな顔は初めてみた。私は一人駅へと向かう途中の道をのんびりと歩いていた。昨日紅條さん達と分かれて私の手伝いをしてくれた優希は普通だった。普通すぎるくらい普通だった優希。優希と私は所謂幼馴染に似た間柄で、実際親同士の仲は頗るいい。勿論それは紅條さんと泉君も同じだろうし、けれど私と優希の間には彼等の間にあるものとは、全く似ても似つかない関係しなかなった。漫画や小説であるような『幼馴染同士の恋』なんてなくて、寧ろ二人とも、敵わない恋をした。
「(三角関係どころか四角関係なんて笑える話だわ)」
私は泉君に、そして優希は紅條さん、だなんて。漫画の見すぎじゃないのか。しかも優希はあの二人と同じクラスだった。別クラスだった私よりもきつかったかもしれない。それでも優希は二人の友人だった。泉君とも仲良かったし、紅條さんとも親しかった。
「って、なんで私が優希の心配なんか・・・」
「俺がなーに?」
「!!、」
背後から聞こえた優希の声、なんでいつもいつもタイミングよく後ろから声をかけてくるのか。狙ってやってるならたいした大物だわ。
「なんで、優希がここにいるの?」
「んー?帰るから?」
「だって、駅だとここから遠回りだよ?」
「それは結衣も一緒デショー?」
「・・・」
言葉に詰まる私に対して優希はにっこりと笑って見せた。
「俺はねー、野球部に挨拶してから帰んの。これ日課。」
「や、きゅうぶ?」
「そー、泉のいる野球部。」
「っ!! 優希、なんで」
眼を見開く私に優希はやっぱり笑って俺も一緒だから、と呟いた。あ、そっかと思いつくのは紅條さんの姿。
「、優希は いつ、から?」
「紅條のこと?」
「うん、」
「・・・つーか結衣とこんな話すると思わなかったなー。」
「それは、私も、だけど。」
「俺は一目会ったときから。」
「え、」
「おーい、坂下!!」
「ちーす、紅條。キビキビ部活やってるかい?」
「バッカ、やらなきゃ監督恐ぇもん。」
いつの間に着いたのか、野球部のグランド。紅條さんがバッドを片手に近寄ってきた。どうやら今は休憩中らしくあちこちで「あっちー」だの「ぎゃー水水!!」だのと騒ぐ野球部員。紅條さんもバッドの横に水が置いてある。なに?ノック中?優希が少しだけ嬉しそうに紅條さんに話しかけた。
「いま、終わったとこ。それより坂下。お前担任に呼ばれたけど?」
「んー? あー、あれかー。」
「なに?」
「課題出してないから起こられた奴だ。」
「出しなよ、課題くらい。」
「だって、紅條も栄口も見してくんないしさー。」
「見せるか!!」
「泉も見せてくんないしさー。」
「見せねぇよ!!」
「うっぉーう!!泉さん!!ご機嫌如何?」
紅條さんの後ろから優希を睨む様に出てきた泉君。紅條さんと同じように汗だくで泉君が現れた。
「てめぇの顔みなきゃ最高だっつーの、」
「酷ぇな泉。」
アハハ、と談笑する3人の姿。優希からすれば恋敵の泉君にも同じように笑顔。凄いな、と思う。私だったらああは出来ない。紅條さん相手に笑顔で会話するなんて、できっこない。
「あれ、伊崎さんも帰り?」
「え、?」
私に気付いた紅條さんがにっこりと笑って話しかけてくる。位置的に優希の後ろだったから気付かないと思ったのに。
「そーなの、そこで会ったからついでに送ってこーかと思って。」
「「ちゃんと送ってけよ?」」
「ダブルサウンドで酷ぇな!!」
じゃなーと、掌を振る紅條さんに明日なーと声を上げて手を振っている優希。「あーやって威嚇されてんの、俺。」と話題が繋がらない会話を始めた。
「俺が紅條のこと好きだって、泉知ってるから。だから俺と紅條を二人っきりになんてしないし、紅條も紅條でたいていは泉と一緒だしさ。もー、さっさと付き合えっての。」
「優希・・・」
そしたら、諦めきれんのにさ。と優希にしては悔しそうに顔を歪めた。いつもひょうきんに笑ってる優希が、目元を隠して悔しそうに歪ませた顔。きっと随分前には諦めていた『想い』なんだろうけど、それでも諦め切れなくて、ってなんだか私と同じだ。
「やなんだよね、ホントはさ。俺、泉も紅條もすんげー好きだから。さっさとくっ付いて、友達同士に戻りたいのにさ。」
残酷だよ、紅條も、泉もさ。
痛々しく笑う優希に、私は酷く泣きそうになった。
私達はきっと、逃げたいと望むのに、逃げる場所すら存在しないところにいるんだ。
子 供 の 恋 が 軽 い だ な ん て 、
誰 が 決 め た の ?
う そ つ き は だ れ ?
な ん で こ ん な に 苦 し い の ?
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