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嘘吐きピエロのマジックショー

凄いね、そう言われた。
なんで、って聞いたらそいつは少し悩んで、やっぱり泉は凄いんだよ。
そう言って笑った。
俺は、その男が嫌いだ。

 

嫌いだ嫌いと言いながらそれでも豪語する
間抜けで馬鹿な俺は一つ溜息をついて落ち着いた

 

 


「泉は凄いと思うよ。」
「いきなりなんだよ。」
「んー、勘?」
栄口は時々恐ろしく天然だ、天然だからこそ恐ろしいと言うことを、俺は田島と長なじみで酷く理解できている。からできるなら今の状態のこいつに関わりあいたくない。

「だってさ、野球上手いし、面倒見良いし、けど素直じゃなくて、でも幼馴染相手だとすげー嬉しそうで、なんていうんだっけ?こういうの、ツンデレ?」
「さ、栄口、どうした?熱?風邪??」
「いや、平熱正常問題なしだよ。」
「問題ありだろ!!」

 

とにかく、と言って話を再会させる栄口。部室の奥のほうでは未だに田島相手に苦戦している花井と阿部。なにしてんだ、あいつら。つーかいつも一緒になって田島を止めてる栄口、いやお前だよお前。お前がこっち居てどーすんの?
「実際のとこ、あの子は凄く特殊だと思うんだよね、俺。」
「は?」
「初めて会った時、少なくとも俺はすげー吃驚した。」
「栄口?」

にっ、と笑いながら今はそーでもないんだけどさー、と続けた。異国の血が入っている幼馴染を思い浮かべてだよな、とは思う。『普通』が求められるこの日本で、『異なる』事は『特別』と大差ない。
「『わー、外人だ』そう思ったからね。んで、『俺なんかが話しかけていーのかな。』これね?結局話しかける前に大体の性格も判っちゃったし、なにより第一印象が『面白い』だからなー。」
「あいつに『外人』つーと怒るぜ?『そーゆう差別、嫌いだからやったらぶっ飛ばすから』とか言ってな。」
「あー、ごめん、それ体験済み。」
「遅かったかー。」

ハハ、と笑いながら、手元のノートに字を書き込む。勉強にはなってなかったけれど。
「それで判っちゃったよ。『その手の差別』を受けたことあるんだって。あ、別に俺も便乗してとかは思ってないよ。怖いなとかそれに似た感情は持っても仲間はずれになんてしようと思いもしなかったから。」
「だろーな。」
「んで、泉はどうだったわけって聞いた。」
「俺?」
「泉は最初会った時、どうだったの、って。」
「・・・・・・あいつに聞いたわけ?」
「うん。」

 

 

 

 

「あっさりと、『うわ、外人』って呟いたんだって?」
「・・・///」
「それで、泉への開口一発目が『女の子』だったって?」
「~~、のやろー・・・」
今思い出してもはっきり覚えてる。金色の髪。大きな緑色の目。クラスで見るような女子とは全く別物のそいつの姿。じっと自分を見て、視線を外さないその姿。紅くなる姿と心を隠すように思わず出た言葉。

「それで、お互い言い合った後に大喧嘩したってのも聞いたな~。」
「マジかよ・・・」
そんなところまで話すか?普通?つーか栄口もなんでこうも軽く言えるんだ?俺の思考はぶっ飛ぶように崩れていく。向こうでは田島相手の人数が倍に増えていた。
「だから、凄いな。って。」
「は?」
「人って、自分と違う人に対して一歩距離置きそうになるじゃん?けど泉は一歩引くどころか前に進もうとして大喧嘩したんでしょ?凄いよね。」

 


「・・・別に、すげーってことでもないと思うぜ?あのとき、喧嘩して泣いて、すげー悔しくて未だに未練たらしく覚えてんだ。もう二度と言わせねぇ、とか絶対『格好良い』って言わせるだとか。」
「そこで、出てくる向上心は田島並だよなー。うーん流石泉。」
「そう思って一晩寝て、起きたらリビングにあいつがいてさー。」
「は?普通にいたの?」
「居たんだって。おはよう、ってけろっとした顔で。両親が急に仕事入ったから預かるんだっつてた。けど俺にはどうでも良くてさ。頭にきてた俺はなんなんだって感じでさー。その後弟紹介されるわ、一緒に朝食取るわ。昼寝はするわ、でなんつーかもう怒る気もしなかった。」
「・・・・・・」


「けど、夜にさ。弟寝た後、ばったり廊下で会ったんだよ。ごめん、って顔真っ赤にして泣きそうな顔で。今でも覚えてんぜ、俺。」
「へぇ、」

『アタシの顔見て、逃げてかなかったの、君が始めてだったから嬉しくて』

俯いた顔の隙間から見えた真っ赤な顔。緑色の瞳が歪んで、恥ずかしそうに顔を染めて、あ、そっかと思い立ったガキの頃の記憶。

「その時思った。俺、こいつ好きなんだって。」
「///なんつーか、泉直球・・・」
「そしたらあいつも同じだつーんだから驚きだよなー。」
『アタシも、』そう言って嬉しそうに笑うあいつの顔を見て、嬉しくなった。きっと一生忘れない思い出の一つ。
「やっぱ泉、凄い。」
「は?」

「俺が泉の立場だったら、きっとそんなこと言えないからね。」
そう言ってにっこりといつもの笑顔で笑った栄口。その表情はどこか、友人に似ていた。あ、そっか。思い立てば簡単だ。


「あいつは俺のだぜ?」
「知ってるよ。」

 

きっと俺達は『嫌い』だと嘘を吐いて
笑い合って涙を流す

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