「息苦しくないの?」
そう言ったら向かいの席に座った孝兄は全然と、珍しく笑顔で答えた。なんだかムカつくから孝介、といつもは呼ばない名前で呼んだ。
色の無い絵画
「俺ねー。」
「なに?」
「孝介のこと嫌いだよ。」
昼を過ぎ人の少なくなった小さな喫茶店。姉貴はいま母さんに電話してる最中だろう。窓際の席で窓の外にいる姉貴を見てそう思いながら告げた。告げたあと、こっそりと孝介の顔をのぞきみる。案の定少し眼を見開いていた。は?と気の抜けた声が小さく聞こえたけど俺はそれを無視する。
「孝介、嫌い。」
「・・・あいつと同じ顔で言われっとなー。」
「アハハハ、」
ギシ、とソファの背もたれに寄り掛かりながら孝介はあーと声を出している。その間、俺はやっぱり姉貴から目を離す事はない。母さんと何を話してるかは知らないけど、始終笑顔。その顔が通行人の注目を浴びてるなんて思っても無いんだろうけど。
「で、なんで?」
「んー?あ、姉貴声掛けられそう!!」
「あんにゃろー・・・」
「孝介って素直ー。」
「って、話題変えよーとすんじゃねーよ。」
声掛けられてもねーじゃん。呆れながらジュースを一口。
「だって、孝介。俺から姉貴獲ったじゃん。」
「は?」
「孝介に会わなきゃ、俺はずっと姉貴といれたのにさ。」
「ば、っかじゃねーの?」
「俺は本気なんでーす。」
被っていた帽子を深く被って顔を見せないようにしながら呟く。俺だって馬鹿だと思うよ。思うけどさ。シスコン、孝介が小さく呟いた。
「あいつはブラコンだし、お前等ホント似たもの兄弟。」
「それ孝介に言われたくなーい。」
「俺はちっげーよ。」
「嘘だー。」
けどさー。そう言って言葉を続ければ、食べ掛けのホットサンドから手を離す。聞きたいことはいくらでもあった。どうして姉貴なの?とか姉貴がいーの?とか、
「、息苦しくないの?」
俺の告げた言葉に、孝介は一拍置いてから、
「すんげー、心地良い。」
姉貴をとても柔らかい表情で見ながら孝介が呟いた。あー、くそ。当てられただけじゃん俺。
「あいつが俺に依存してるよーに、俺だってあいつに依存してんぜ。お互い様だっつーの。俺等はそれでいーんだよ。」
「うっわ、すげームカつく!!」
「悔しがれ悔しがれ。」
なぁ、孝介。んー?氷だけになったジュースを置いて孝介がこちらを見る。
「姉貴と付き合ったりしねーの?」
「あー、」
俺に戻していた視線を避けるように姉貴に向ける。途中こちらに気付いた姉貴がにかっと女らしくなく歯を見せて笑う。
「まだかなー、って母さん言ってたよ?つーか、高校あがったら同棲させよかなーってさ。」
「・・おばさん・・・」
早いだろ、ぜってー、少し呆れたよーに呟きながら姉貴相手に手を振っていた。同棲自体はOKなんだ、と呟けば、まー男の夢?と笑った。
「あー、やっぱ孝介嫌いだ。」
「あー、そー。」
「そーゆうとこ姉貴ソックリ!!」
「お前もな。」
「けど違うんだよ、孝介は。」
「はぁ?」
「だって、姉貴泣くじゃん。」
なんだそれ、孝介が言った。だって泣くんだよ姉貴は。あんたの前だとさ。
「家族の誰にも泣くとこ見せないのにさ、孝介の前だと泣くんだよね。姉貴。」
だからすっげー羨ましい。そう言ったら孝介はごめん、と小さく言った。それが凄く悔しい。
「きっと姉貴、俺等がいなくなってもきっと、孝介の前でだけ泣くんだ。」
「、い「居なくなるとか不吉なこと言ってんな!!」
「「!!」」
「お前の勘当たんだからさー。」
言いかけた言葉は仁王立ちした姉貴の言葉に遮られる。バーカと小さく笑って言う。
「何の話してんのか分かんないし、実際泣かないかもしんなけど、居なくなったらすっごく悲しいんだよ。」
二度と言わないでよねー、と俺の頭を撫でながら孝介の隣に座る。あー、たく・・・
「「ん?」」
「好きだよ、大好きです。二人とも。」
「「知ってるよ。」」
敵わない。姉貴にも孝兄にも、きっと俺はずっとこの二人の『弟』なんだ。あー、悔しい。
「すき焼するから早く帰って来いって。」
「やっりー。」
「太るぞー孝兄ぃ。」
「俺は背でかくなりてーんだよ。」
「この中で一番小さいもんねー。」
「ぜってー抜かす。」
「「頑張ってー。」」
まぁ、いいかと思う俺はきっと二人に知られてるんだ。
※影で注目浴びてるのも露知らず。
※これに泉兄が入ったら凄いことになります。
※三人デート。弟君は殆ど傍観者。
※でも構う二人。実はブラコンヒロイン&泉。
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