あいつは言った、
「泉以外の誰も、『大切』にしたくない」
俺の目を真っ直ぐ見て、そう告げた。
資格の無いヴァイオリニスト
(思ってもみなかった、)
(それが嬉しいということに)
(俺の心は歪んでいる)
(戻れないなら、進めばいい)
教室は騒然としたまま俺の幼馴染は、颯爽と自分の教室に帰っていった。「いずみぃ」田島や浜田が情けない声で俺の名を呼ぶ。「こ、こ、こわ、か、った・・・」最後は三橋まで巻き込んで身震いしてる。
「泉が怒るのもこぇーけど、あいつもマジこえー。冷戦だレイセン。」
「ひっさびさに見たな、あれ。」
呆然としている俺の後ろであれやこれやと好き勝手言い始める三人。
「(・・・くっそ・・・)」
怒ってた?んなわけねーだろ。あれは呆れてた。呆れてたつーより、諦めてた。何に?何を?決まってる、『俺』に、『俺』を。
(ざ、けんな。)
俺はそんなつもりで言ったんじゃなかった。ただ、あいつが笑っていられるならそれでいーと、
(俺が、言葉間違え、たんだよな?)
(あーくそ・・・)
あいつが俺に依存していたのは知っていた。何せ自分で言ってたくらいだ。俺もなんとなく分かってはいた、いたんだ。なんせ俺がそうだから。俺だってあいつが『居ない』ことに耐えられない。
『あの時、泣けなかったのはきっと泉が居たからだよ。』
『俺?』
『父が死んだ、母が死んだ、弟までも死んだ。それでも泣けない。寂しいのに泣けなかった。親不孝者だって思ったけど、違ったかな。初めて知ったのは泉に好きだっていわれたときだから。』
『///』
『きっとアタシは、ずっとずっと、“泉”を望んでたんだ。』
そう言って笑った。笑った顔は今でも忘れられない。馬鹿な奴。俺の良いたいこと、理解も悟ることもできるくせに、肝心の言葉を聴かないで諦めるなんて。ふざけるな。
なんどだって言ってやる。
指揮者を失った楽団の奏でるメロディ、聞けたものじゃないと誰もが呟いて立ち去った
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