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多種多様に日々徒然 小言だったり小説一部だったり、 コメントはお好きにどうぞ
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チク、タク、 時計の音が遠くに聞こえる。

「何、してんの?」
振り返った先に見たのは、幼馴染の鬼の形相。目の前の男と共に、アタシは動くのを止めた。つーか止めさせられた。幼馴染になって10年来。さて、今までこんな形相の泉を見たことがあっただろうか。いや、ないな。・・・いや、似たような雰囲気を見たことはあった。確かあの時は、泉の兄と遊んでいたときだった。家に遊びに行ったら泉がいなくてそれじゃあと圭兄と遊んでるところに泉が帰ってきて、そうそのときだ。はっきり行って、あのときの泉と笑顔で対面していた圭兄を思わず尊敬した。
今そんな状況。目の前の男(名前はうろ覚え、確か伊藤・・・?)にあのときの圭兄の姿を思い浮かべるのは無理。さて、どうしよう。
そんなことを考えながら、とりあえず、腰に回ってる腕を強引にはがした。「あ、」とかやっとで声を出した、えっと鈴木(違う)から離れて泉と対峙した。


「何、してんの?」
「見たとおりだと想うけど。」
「・・・それ、意味分かって言ってんのか?」
「うん、たぶん。」

「俺から鞍替えする気にでもなった?」
バシッ――
気づいたらアタシより高い位置にある泉の顔を思いっきり殴っていた。ぐうで殴った指の付け根が痛い。泉の右ほほが赤くなってるのが見えた。
「なっ、」
「『何すんだよ』ですか?」
「・・・」
「巫山戯んな。」
アタシは何も言わずに立ち去った。後ろで泉が小さくした打ちする音がした。あー、と後悔してももう遅い。


(やっちまった・・・)
(あーあ、馬鹿だアタシ)
(こうなるとマジで長いんだよな)
(お互い意地張るから長引くんだよね。)
(・・・・・・)
(・・・・・・)

((絶対謝ってたまるか))
車両倉庫のブルートレイン

 
「あのさぁ、」
「んー?」
「泉と何かあった?」
昼休み、クラスでぼーっとしていたら、後ろの席の栄口にそういわれた。あれから3日。顔はあわせるし会話もする。するけどそれだけ。
「なんでそー思う?」
「いや、まぁ、なんとなく。」
「いつから?」
「三日ぐらい前?」
「気づいてて黙ってたの?」
「え、触れられたくないのかなぁ、って。」
「いやー、栄口のそういうとこ好きだわぁ。」
「真面目に答える気、ある?」
「(にっこり)」
「・・・・」


栄口の危機を察して巣山も近づいてくる。何の話?と隣の椅子に座った。遠くで「野球部が集まってる」なんて女子の黄色い声が聞こえた。それを無視しながら、じっと見てくるクラスメイト二人を見返す。巣山もどうやら栄口から聞いたらしい。
「大したことじゃない。と思う。」
「でもやっぱ変だし。」
「3日前っていや、泉の奴、右ほほ殴られた痕あったな。」
「あ、それはアタシ。」
「「は?」」
「アタシが左で殴った痕。」
二人が青い顔をする。「投手が何やってんの!!」「しかも利き腕!!」なんて騒ぎ始める。煩いなぁ、知ってるっての。
「何、喧嘩?珍しいね。」
「俺、お前ら喧嘩しねぇと思ってたし。」
「いやするよ、数は少ないけど。」
「へぇ、」

「今回は喧嘩になるの、かなぁ、」
「えっと、詳しく聞いても?」
「あー、聞いて聞いて。アタシ等こうなると意地張って長くなるから。」

前は圭兄が中に入ってなんとか仲直りした。その前は弟だった。とにかくお互いに意地っ張りで、負けず嫌い。頑としてお互いを譲らない。こんなとこまでそっくりじゃなくたっていいのに、と思うけど。
「三日前、アタシさ鈴木だったか工藤だったかに告白されたのさ。嫌だって言ったら思いっきり抱きつかれた。『既成事実作ってるやる』とかなんとか。」
「「はい!?」」
「なに、堂々とカミングアウト!?」
「で、そこを泉に見られた。」
「「・・・・・・(うわぁ)」」
「その後、『俺から鞍替えする気にでもなった?』なんていうから、頭来てぶん殴った。信じらんない。思いっきり抵抗してんの見てたくせに。アタシが誰と付き合ってんのか大声え言ってみろてんだ。馬鹿泉。」

後から聞いた話では、このとき、アタシは泣きそうな顔だったらしい。

ふとした偶然(と言う名の野球部陰謀)のもと、アタシは泉と一週間ぶりに下校していた。いつもと違うのは、チャリを押す泉の後ろをアタシが歩いてるだけ。お互いに会話がない。言い出しにくいのも分かってるけれど。一週間も経てば意地なんて消えて、後はただ気まずいだけ。タイミングも合わない。この一週間、泉とは部活でしたか顔を合わせていなった。二件隣でも帰るのが10時近く、朝も4時。顔を合わせたくないと願えば簡単に避けられる。おばさんの夕食の誘いも色々理由つければ何もいわれない。実に簡単だった。
キィキィと泉の押すチャリの音が聞こえる。このまま歩いていけば確実に10時を過ぎる。アタシは多少の遅刻を許されてるとはいえ泉には早く帰ってもらいたいくらいだ。そこまで考えて、はぁ、と息が抜けた。結局のところ何一つ変わってない。喧嘩してても結局『泉孝介』が頭から離れたりしない。
「あー、馬鹿みたいだ。」
小さく呟いた声に、泉が「全くだ」と言って返事をしてきた。チャリのスタンドを出して泉が振り返る。アタシの身長をとっくに追い越した泉。兄弟って本当に似るんだな、と圭兄を思い浮かべ、けれどあの人よりもしっかりしてる体付き。細身でも、薄い体をしていても、それでもしっかりと筋肉がついた。アタシの頭をほんの少し、5センチほど追い越した頭。くそぉ、と悔しく思った反面、嬉しかった1年前。今はもうこの差が心地よい。

「「・・・・・・」」

二人言葉でなく視線をぶつけて立ち止まる。

「痛くなかったから。」
「うん、」

「嫉妬じゃないよね?」
「うん。」

「手、平気?」
「うん、」

「ちょっと頭に来た。」
「うん。」

 


「「ごめん」」

 

 

 

発車オーライ!夜行列車
(メチャクチャ甘やかしていーか?)
(望むところデス。)

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