「ハッピーバースディ、」
自分にしては余りにも下らない発音の仕方をしたと思う。
そう言って手渡した包みを見て、彼はその大きな眼を更に大きくして動きを停止した。
「は?」なんて言葉も出てこないくらいにぱっかりと口をあけて、間抜けだ。
「何?」
たっぷり60秒待って、聴こえてきた言葉はこれ。
「欲しがってた新しい財布。いらないなら返せ。あたし使う。」
包んでるわけでもなく、無造作に雑貨屋の袋の中に入れられたシルバーチェーンのついた黒い財布。
多分、彼の趣味にストライクなはずのそれ。
勿論アタシの趣味にだってストライクだ。
選んでるとき、「やっぱ似てるんだな」なんて改めて思ったくらいに。
「おー、さっすが、判ってんじゃん。」
「でしょ。」
「遠慮なく貰っとく。」
「ん。」
だから返されないと判っててもう一つ色違いを買うあたしは馬鹿だ。
そっちは?ふと聴こえた幼馴染の声に、問い返すこともなく、ポケットに入れていた財布を見せた。
「はは、やっぱ一緒か。」
「うん。」
彼のには小さく刺繍された鳥のマーク、アタシには蝶のマーク。
そっくりな私達。
趣味も好みもそっくりで、双子じゃないのにそれ以上に、お互いに依存する。
ああ、なんて愚かな人間。
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